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佐々木譲『制服捜査』を読了 ~個人の努力のすばらしさと限界を感じるストーリーテラー~

 「制服捜査」 佐々木 譲 (著) 新潮社 を読了してしまった。

 ひさびさに読んだ、佐々木譲さんの小説であるが、本当に面白かった。

 佐々木譲さんは、学生の頃から好きだった作家さんなので、かれこれ10年以上もずーっと読み続けている次第だが、この作家さんは北海道出身で現在住。学生時代に読んで、それから数年たった北海道に住まった私にとって、なんかとても親近感が湧いてしまうこともある。そして、この作品は北海道が舞台。雰囲気的になるほど・・・と感じさせられるものも大きいし、私にとって懐かしさを感じさせる雰囲気がとてもよい。

 また、この作家さん独特の、なんというか・・・個人の努力のすばらしさと限界と・・それをよく感じさせられる感じだ。

 この作品では、刑事課生活が長くすばらしい刑事としての能力を持ちながら、制服警官になった主人公が、様々な事件に関わりその解決の糸口を見つけながらも、捜査ができない制服警官の宿命のもと歯がゆい思いをしていく物語である。個人の努力のすばらしさと限界はそこに現れている。

 佐々木譲さんの出世作「ベルリン飛行指令」を読了した時も同じようなことを感じた。第二次大戦下、空を飛ぶには、軍に所属するしかなかった主人公・・・そしてベルリンまで様々な困難を乗り越えて飛ぶものの、日本含め枢軸国は配線への道をまっしぐらであるという物語であるが、日本からドイツまで飛び抜くという個人の努力のすばらしさはあるが、その限界が現れている。佐々木譲さんの、どんな作品でも、多かれ少なかれ、そういう寂しさのような感覚が貫かれているのが特徴であろう。そういえば「ワシントン封印工作」でも顕著にそういう感覚が得られたことを覚えている。

 個人の努力のすばらしさとその限界を描かせると超一流の作家さんと思っているのだが・・・。 ただ、だからこそ物語がなんかもの悲しい感じが出がちであるが。

 この「制服捜査」も、かなりおすすめの本である。こういういい小説を読み終わってしまうとやや寂しい。まぁ、前述の作風の問題でもあろうが。

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