二人歩き、私見

 

男女のカップルが二人肩を並べて歩く、これはごく自然の光景でしょう。男女が親しければ親しいほど肩の距離は近くなるでしょうし、カップルである以上、肩を並べることをしない方がかえっておかしいでしょう。女性が三歩後ろをついてくるなどというのは、前時代的でありほとんど残っていないでしょう(ひそかに、これを願う、または、好む男性はいるかもしれませんが)。もし、知り合いのカップルが離れて歩いていると、「さては夕べけんかしたな???あいつ浮気でもして発覚したかな?」なんてかんぐりたくもなるかもしれません。それほど、カップル、すなわち親しい男女が肩を並べて二人歩きすることは当然のことなのです。

ただ…、その二人歩き、非常に困ってしまうことがあります。これは、もてない男の私のひがみだけから来るものではありません。

カップルの二人歩きには2つの共通性があります。

  1. ゆっくり歩く
  2. 二人の並んだ幅が歩道の道幅をちょうど同じ位のことが往々にしてある

 

 そう、うしろから追い抜くとか、前からカップルが来るとかいった場合、通行上困ってしまうのです。

 

1.に関して、これは説明の必要はないかもしれませんが、せっかくの二人の時間をせめて長く持ちたい、そんな涙ぐましい心境から生まれることでしょう。実際、私も好きな女性と歩ければカタツムリのようにゆっくり歩くでしょう。当然じゃないですか!
2.に関して、まあ、歩道は人がすれ違えるくらいを標準にして作られているのかもしれませんから、二人並べば幅を占拠してしまうのかもしれません。

 

まあ、そんなわけで、とりあえず、カップルの二人歩きはほほえましいとばかりは言ってられないわけで…。

カップルを後ろから追い抜こうとしてもなかなか抜けないし、まさか、のれんをくぐるように「ちょいとごめんよ」と間を割って通ることもけんかを売っているようですし、かといって、追い抜かないでいようとしても、相手はカタツムリの歩みです、電車に遅れてしまうかもしれません。でも、このカップルのためにわざわざ回り道をしてやる義理もないではないか。そんなこんなで、困ることになるわけです。

もてない男代表の私の場合、「いちゃついてんじゃねーよ」というひがみ、嫉妬心にさいなまれるというおまけ付きでなおさらたちが悪い。

でも、それが赤の他人ならまだいい。知りあいだったら超ーーー困るわけです。

あったんです。そういう事態。

わたしが駅に向かう一本道を歩いていると、前を一組のカップルが歩いていました。そのカップル、職場で知った顔でした。その二人がそんな関係にあるとは露知らず、実際公開していないことなのでしょう。さー困った、電車の時間は迫っているし、回り道もしてらんない。

そこで私は考えた。第一だね、ここは天下の公道じゃないか。何をはばかる必要があるんだ!!!俺はこの道をまっすぐ進みたい、文句あるか!!

てなわけでいざ尋常に勝負勝負とばかり、剣豪・佐々木小次郎にでもなった気分で堂々と横を追い抜いたつもりだった。

でも相手のほうが上手だった。まあ、堂々と二人腕を組んで歩き、知っているはずの私を見てもまったくうろたえないではないか。かえってこちらの方が「すみませーん…」てな感じになってしまっている。

負けた…。

私はまさしく佐々木小次郎だった。巌流島で宮本武蔵に敗れ去った小次郎だった。

この二人は、後に結婚するわけだが、結婚後聞いてみると彼らも結構うろたえてはいたらしい。やはり、秘密にしていたことを見られたかららしい。

まあ、痛み分けといったところか。

この話を職場の先輩にしたら「大津君、そこで本当に勝負するなら、彼女の腕を取って引き寄せなきゃ、それが勝負だよ」とのこと。確かに勝負と思っているのは私だけなのかもしれなかったんですがね、相手は勝負と思っているわけではないんだから。

でもね…その勇気があれば、今ごろこんなところで「もてない男」語ってはいませんよ。

 

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